
いよいよ万博の終了まで1ヵ月ほどになりました。寂しいですね。
思い返すと、大阪での開催が決まった時から、私は世界中の国が集まる万博が楽しくないはずがないと信じ、チケットを発売開始初日(2023年11月30日)に購入しました。流石に気が早いと家族から笑われました(笑)
また、「ミャクペ!」 「ミャクポ!」アプリを早々にインストールし、首を長くして開催を待っていました。
その割に実はスタートは5月と出遅れたのですがw、会社をタイミング良く退職して、通期券に買い換え、20回以上通いました。もっと多い猛者がたくさんいますが、自分としては大満足しています。
ただ、やはり良かったことばかりではなく、イマイチと思うこともたくさんあります。
今回はそのあたりをまとめてみようと思います。
ちょっと評論っぽくなりますが、温かい目で読んでいただけるとありがたいです。
その前に、今回の万博の開催に関わったすべての方々に感謝を伝えたいです。
誘致から準備、開催まで、多くの困難や批判に耐えながらここまで形にしてくださった関係者の皆さん、本当にありがとうございました。
これだけ世界各国の文化や技術に触れる機会は、普通にはあり得ません。
こんな貴重な場所を作ってくれて、心から感謝です。
以下には少し辛口な内容もありますが、ベースは感謝と尊敬の念で満ちています。
パビリオンの体験価値
パビリオンは、人によって好みが分かれますが、やはり体験価値と満足度がほぼ比例すると言ってよいでしょう。
ただ、万博というイベントの性質上、単に楽しければOKではなく、「エンタメ」「テクノロジー」「メッセージ」という三つの要素のバランスが取れた体験であることが求められます。
その点で、多くの企業パビリオンは秀逸でした。
「住友館」「ガス館」「NTT」は、いずれも高い「エンタメ」性を備えつつ、最先端の「テクノロジー」を駆使し、さらに企業としての「メッセージ」がきちんと伝わってきました。
「シグニチャーパビリオン」も同様で、それぞれ思想性の高い展示を、体験に昇華させていました。
開催国だけあって、日本のパビリオンは総じて記憶に残っています。
一方海外パビリオンは、投資規模などの違いもあり、バラつきが感じられました。
とりわけ映像や文字に頼り、日本語ナレーションもない展示は、どうしても一度見ただけでは理解や印象に結びつきにくい印象です。
逆に、実物展示や生演奏といった五感に直接訴える体験型の展示は強く記憶に残り、「イタリア」「ハンガリー」「アイルランド」「サウジアラビア」「コモンズ」などが人気を集めた理由もここにあります。
また、「ヨルダン」の砂漠体験は、裸足であるだけで体験価値がこれほどにも変わるのかという発見がありました。
パビリオンの運営
運営面に目を向けると、各国・各組織が長期にわたり努力を重ねていたことは疑う余地がありません。本当に頭が下がります。
とはいえ、一部のパビリオンで、運営が非効率だと感じることもありました。
特に集団で動く形式のパビリオンで、最初に説明を聞くケースや、全員で映像を見て進むケースです。
パビリオン側にはストーリーを重視したい意図があるのだと思いますが、「雰囲気だけ見たい人」や「2回目以降の人」をうまく流せば、より多くの人に入場の機会を提供できます。
例えば「トルクメニスタン」は、映像をループ再生し、来場者が自由に見る方式だったので、待ち時間が短縮されていると感じました。
また、「フランス」「中国」「カンボジア」「夜の地球」のように自由見学型のパビリオンは、来場者が自分のペースで体験できるため、列が長くても進みは比較的早く、来場者の満足度が高まります。
勿論、「ヨルダン」「ハンガリー」のように少人数での体験そのものに価値がある場合や、「住友」「オランダ」のようにアイテムを使う場合など、自由見学が相応しくないケースもあります。
つまり「体験の質」を踏まえた上で「適切な運営方式」を設計することも、満足度に影響を与えると考えられます。
イベントの体験価値
イベントも満足度は半々ですが、本物に触れられる体験はやはり印象に強く残ります。
特に「ナショナルデー」は、その国と日本との関係を理解する機会になるだけでなく、伝統舞踊やパフォーマンスを間近で体感でき、知見と感動の両方を提供していました。
その他、ポップアップステージや各パビリオンでの各種イベントも、パビリオン内の見学では得られない、各国の鼓動を感じる機会になりました。
こうした「体験型」の要素は、単なる鑑賞型展示よりも記憶に残りやすく、満足度に直結すると言えます。
イベント会場
シャインハット以外の会場は、見やすさやスペースの面で不満が残りました。
レイガーデンと5カ所のポップアップステージは、基本的には周囲を広く取って、傾斜や段を付けて後ろからでも見やすい構造にしてほしかったです。
レイガーデンは、長時間並んで席が取れても、3列目以降になるとステージが見えにくく、満足度を大きく下げる要因になっていました。
ポップアップステージも、モニュメントが見学スペースの一部を占拠していたり、とってつけたような配置で見学スペースが狭かったり、観客動線や視線の配慮が不十分だと、素晴らしい内容も十分に体感できず、体験価値が下がってしまうと実感しました。
スタッフ・ホスピタリティ
テーマパークではないので過剰なサービスは期待できませんが、スタッフの対応にも差がありました。
親切なスタッフに出会うと体験の印象がぐっと向上する一方、ぶっきらぼうな対応は満足度を下げる要因になります。
やはり「人の対応」も、展示やイベントの価値を補完する重要な要素だと感じました。
チケットサイト・予約サイト
正直、チケットサイト・予約サイトは非常に使いにくく、世界に向けてかなり恥ずかしい出来でした。なのでここだけは長くなりますが、書かせてください。
結論から書きますと、諸悪の根源は早い者勝ち方式です。
3日前も抽選でいいじゃないですか。
当日も抽選やキャンセル待ち登録制でいいじゃないですか。(同時に5個までキャンセル待ち可とか。)
今時、早い者勝ちにするからサーバーへのアクセスが分散されなくなるし、自動化ツール(Bot)が作られるし、慣れた人が勝つし、といった不平等が起こるのです。
そんなことは分かり切っていることで、今回の万博に求められていたのは、そういうことを起こさず、老若男女が平等に参加できる手法を実証することだったのではないのか、と思うのです。そうすれば万博エライ!と世界中から称賛されたことでしょう。
その失態を棚に上げて、閾値が非常に低いと思われる大量BANを敢行したことも、極めて残念な対応です。しかも警告なしの一発BANって、ここは日本なんですよ。
自動化ツールの排除は大事ですが、おそらく何万IDもBANしないと状況は改善しません。労力をかける先を誤っているとしか思えません。
次に詳細ですが、夜になるとログインが遅い問題は初期段階から発生していました。
でもこれって、超簡単な算数の問題なんです。
入場者数の上限が決まっているので、例えば3日前抽選で6万人以上が殺到するという想定は容易にできます。これを10分以内で捌こうとすると1秒間に約100人処理する必要があります。ところが、初期は10人しか処理しておらず、全員のログインに100分以上かかっていました。
そうです。そもそも早い者勝ちを採用できるシステムではないのです。
現在は改善され、1秒間に30人程度まで向上していますが、待ち人数は増え続けており、まだまだ不十分です。さらに日中も待ち時間発生が常態化しています。
そもそも、サーバーのスケーリングが動的じゃないようで、必要な時に必要な能力を発揮する構成になっていません。
アジャイル開発も導入されていないと思われ、ユーザーが便利に感じる小さな改善(パビリオン検索の不要項目フィルタなど)が公式には実装されないままでした。チケットサイトという性質上、バックエンドはウォーターフォールがよいかもしれませんが、フロントエンドはアジャイルで良いのではないでしょうか。
UXもひどい出来で、しかもクエリ(要求)が大量発生するような仕様で、10年前のソフトを見ているようでした。
こうした状況から、受注側だけでなく、決定権を持つ発注側のクラウドやアジャイル開発、UXに関する知識不足が大きく影響したのではないかと思います。DXを掲げながら、まだまだ実務面で理解が及んでいないことが露呈した印象です。
アカウントの乗っ取りも発生していますが、こちらについてはシステムの問題なのか真相が分からないので、記載はやめておきます。
バーチャル万博
バーチャル万博は非常によくできていて、とても楽しめました。
(少し重く、PCのファンがブン回っていたのは気になるところですが。)
こちらはクリエーターが自由に作れる環境だったのではないかと想像します。
パビリオン内の作り込みも必要なため、早い段階でプラットフォーム開発が行われ、余計な政治力が介入する前に進められた成果だと想像しています。
ただ、全体として利用者が少なかったのは残念です。
私は、今回のバーチャル空間は万博史上初の快挙であり傑作だと思っています。
旅行会社と連携するなどして、是非残してほしいです。ただ、ダウンロードアプリだと利用者数が限られるので、ブラウザからアクセスできるクラウド型にして、検索でも引っかかるようにしてほしいです。
私は今回、ドバイ万博のサイトをかなり参考にしました。
同じように次回の万博でも、今回の成果が活かされることを願っています。
ミャクミャク
私は「ミャクミャク」を初めて見た時に、万博の成功を確信しました。
個人的には直感的に素晴らしいデザインだと思ったのですが、世間の反応は極めて悪く、これにGOをかけた万博実行委員の人たちは、かなり頭が柔らかく、楽しい万博にしてくれるに違いないと直感しました。
考えてみれば、前回の「太陽の塔」も気持ち悪がられていたんですよね。
その「太陽の塔」は、建築物としての価値と、アートとしての価値があります。
今回の万博で建築物の象徴として残るのは「大屋根リング」です。(一部だけになりそうですが。)一方、アートの象徴として残るのは「ミャクミャク」です。
万博後の跡地の利用方法にもよりますが、「太陽の塔」と同じレベル感で「大屋根リング」と「ミャクミャク」が後世まで残ると思います。
入場ゲート
これはどうしても言いたかったので項目を作りました。
近年の安全確保の観点から、あれだけの数のゲートを準備しても、並ばないと入れないというのは仕方ありません。
ただ、なぜあんなに無法地帯の列で放置するのでしょうか。
4列(2列×2)のゲートもあれば3列のゲートもあります。先日は横が2列(1列×2)で並んでいることに気づき、心底ガックリしました。何回も悔しい思いをしました。
白線を引くだけじゃないですか。
最初は4列で並んで、途中から2列になって、左右の手荷物検査に分かれるように、白線で誘導するだけです。あれだけ予算をかけておいて、白線を引く予算もなかったのでしょうか。謎しかありません。
最後に
全体として、万博は非常に楽しく、知見も広がる貴重な体験でした。
パビリオンやイベントの内容と運営、スタッフ対応、チケットサイト、バーチャル万博など改善点もありましたが、それでも「何度も行ってよかった」と心から思えるイベントです。
改めて、関係者の皆さん、本当にお疲れ様でした。そしてありがとうございました。
(あ、まだ終わっていないんだった。それにまだ行くしw)